脳を鍛えると、物事を処理する速度が上がるため、一生の限られた時間のなかで、できること・やれることを増やすことができます。また、脳を鍛えると、記憶力や理解力が改善されるため、他人から高い信頼を得ることもできましょう。さらに、脳を鍛えると、アルツハイマーや認知症などの脳の衰退が招いてしまう病を防ぐことができると考えられるため、いつまでも健康でいられます。ほとんどの人にとって、脳を鍛えることは、喜びです!
かつての学説は、成人期をすぎた脳は衰える一方でありました。ですが現在では、それは間違いであることが判っています。
脳の研究自体がじゅうぶんに行われていないことを思えば、それは納得できるはずです。
話をもどしますと、現在では脳を鍛えることによって、成人期をすぎた脳の衰えを食い止めるどころか、脳を成長させられるわけです。ここでは、その代表的方法を10つ記します。
脳を鍛える方法ベスト10!
脳を鍛える前に、まず念頭におくべきことは、脳を鍛える目的です。単に健康的でありたいために脳を鍛えるわけではないでしょう。もっと創造性の光る仕事をしたいために脳を鍛えるのです。目的をもってことに励むことで、脳を鍛えるのみならない、利益がもたらされます。
脳を鍛える方法は数多くありますが、以下の10つが、その代表的方法でありましょう。
- 読書すること
- 運動すること
- 断食すること
- 新しいことに挑戦すること
- “多種多様な” 人とコミュニケーションをとること
- 我慢すること
- 笑うこと
- 未知の世界へ旅すること
- 外国語を学習すること
- よく噛んで食べること
1. 読書すること
脳を鍛える方法として効果のもっとも高い方法は「読書」でありましょう。
読書によって脳の神経繊維のつながりが強化されることがアメリカのエモリー大学の研究で示されています。脳神経のつながりが強化されることは、すなわち脳内での電気信号を伝える速度が上がるため、頭の回転速度は上がり、物事の理解力も深まります。
黙読ではなく、音読すること
“脳トレ”の生みの親、川島隆太教授によれば、「音読」が脳の活性化に有効であり、認知症の予防に効果的であるそうです。また、音読によって、音読した内容が記憶されやすくなるとも考えられています。
2. 運動すること
運動することで(有酸素運動によって)タンパク質のひとつである「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の量が増えることがわかっています。BDNFは神経新生を刺激および制御するのに役立つタンパク質でもあり、BDNFの量が増えると学習や記憶の力が高まるとされています。
これは私の仮説ですが、BDNFを増やすことは、神経繊維(ケーブルのようなもの)をとり巻いているミエリン(髄鞘)という脂質の層の成長につながるのではないでしょうか。ミエリン鞘は絶縁体としての機能をもっており、成長すれば、神経繊維を流れる電気信号の伝導力を高めてくれます。つまり、運動する、BDNFが増える、ミエリン鞘が成長する、という図式が成立すると考えられるわけです。
残念ながら女性は、男性よりも、運動によってBDNFの量が増えるという効果は得られないそうです。
関連する本:一流の頭脳
BDNFは高カカオチョコレートを食べても増える
BDNF(脳由来神経栄養因子)はチョコレートを食べると増えることが知られています。ただし、BDNFが増えるのは高品質なチョコレートでカカオの含有率が高いものに限ります。ホワイトチョコレートではBDNFは増えないようです。また、ポリフェノールの一種であるフラボノイドは(高カカオチョコレートに含まれる)神経新生を向上させられるようです。
過去記事:【高カカオは常識】本当に健康に良いチョコレートの選び方を徹底解説
3. 断食すること
動物実験によれば、断続的に断食すると(16時間ほど)、BDNF(脳由来神経栄養因子)のアップレギュレーションを引き起こし(因子に対する感受性を敏感にして)、海馬の神経新生のレベルを上昇させられます。
つまり断続的に断食することで、脳の成長を促進できる(脳を鍛えられる)わけです。
BDNFの量が増加するとミトコンドリアの数が増える
「BDNF(脳由来神経栄養因子)」が増えると神経細胞内の「ミトコンドリア(細胞内小器官)」が増殖します。ミトコンドリアは糖やケトンを原料としてATPを産生し、ATPは私たちの身体に60兆個あるとされる細胞のエネルギーとなります。
ミトコンドリア研究の第一人者・太田成男氏によれば「ミトコンドリアが増えれば増えるほど健康でいられる」といいます。
過去記事:少食で健康になる!少食の効果(メリット)と方法とコツを徹底解説!
4. 新しいことに挑戦すること
ハーバード大学の神経心理学者であるPapp氏によると
……by learning a new skill—leads to actual changes in the adult brain. “It may create new connections between brain cells by changing the balance of available neurotransmitters and changing how connections are made,” says Dr. Papp.
……新しいスキルを習得することは、実際に成人の脳に変化をもたらします。神経伝達物質のバランスを変えたり、つながり方を変えたりすることで、脳細胞間に新しいつながりを生み出せるでしょう。
脳細胞間に新しいつながりを生み出せれば、今まで発揮されなかった新しい能力を発揮できる可能性があるというわけです。
新しいものに対する抵抗感・恐怖心は、老齢につれて増幅します。だから高齢者は、生活の変化を忌み嫌い、毎日の生活がマンネリ化する傾向にあります。そうなると、脳は鍛えられず、むしろ衰える一方となるため、とくに高齢者は果敢に新しいことに挑戦するべきです。
30日間チャレンジ!
これは「何か新しいことに挑戦して30日間続ける」という主旨の動画です。小説を書いたり、外国語を学習すること等。本動画のスピーカー、元GoogleエンジニアのMatt氏は、「新しい習慣を身につけたり、何かの習慣を絶つのには30日間がちょうどよい長さである」といいます。
5. 多種多様な人とのコミュニケーション
相手の話を理解すること、自分の話を伝えること、つまりコミュニケーションをとることは全体的に脳の領域を活性化させます。
また、あるfMriを用いた研究では、話し手と聞き手がほんとうにお互いを理解したとき、聞き手の脳と話し手の脳の類似性が強くなることが示されています。両者の脳の反応は結合され、非常に似ることになるわけです。つまり、高齢者は若年者と、若年者は高齢者と話すことによって、両者の脳は同期することになり、ゆえに脳細胞間に新しいつながりを生み出せることができると考えられます。「頭のよい人と会話すると頭がよくなる」というのは両者の脳の類似性が強くなるからでもありましょうか。
おばちゃんに学ぶ、見知らぬ人に声をかけること
脳を鍛える方法【4】の「新しいことに挑戦すること」に要を得て、見知らぬ人に声をかけるならば、コミュニケーションによって脳が全体的に活性化するのみならず、脳細胞間に新しいつながりが産生されるから、なにか新しい能力を開拓できます。
ナンパで脳を鍛える
下品な行為として誤解されている「ナンパ」ですが、〈脳を鍛える〉という名目があれば、従来のイメージは払拭されるでしょう。実際、ナンパすることは、勇気が求められ、「いかにして会話を弾ませるか」と熟慮しなければなりません。また、ナンパすることで、読書では得られない「未知の情報」を得ることもできます。ただし、礼儀作法と清潔感に欠けている人は、ナンパすると警察に通報されることがありますので、やめてください。
6. 我慢すること
過去記事『前頭葉を鍛える方法』のなかで脳を鍛えるために「我慢すること」を紹介しました。「脳の司令部」とも呼ばれている前頭葉は、「感情」や「記憶」さらには「集中」や「認知」を司ります。暴飲暴食、悪口雑言、それら一過性の衝動を我慢することによって、忍耐力、認知力、記憶力、集中力は高められ、よりよい人格に近づくこともできます。
スタンフォード大学による「マシュマロ実験(我慢を遅らせられる人の研究)」でも紹介がありますが、我慢できる人は、テスト(SAT)でも優秀な成績をおさめているそうです。何しろ断続的な断食(16時間ほど)が、事実、脳機能を向上させるわけですから、当然の結果とも言えるでしょう。
7. 笑うこと
「笑うこと」は、脳の表面部分である「大脳皮質」の血流量を増えしてくれます。
大脳皮質はその場所によって(前頭葉の表面であるのか側頭葉の表面であるのか等によって)様々な働きがあります。総合的に考えれば「脳力」を司っています。
血流量が増えるとは、いいかえれば、脳に運ばれる酸素(エネルギー)が増えることで、脳の働きが活発化するということです。
血流量が減っている人は、もの忘れする傾向にあるとも言われています。血の巡りをよくする食品を摂取したり、運動することによって、血流を滑らかにすれば、より優れた頭脳に進化するかもしれません。
笑うことで「NK細胞」が増える
また、笑うことは脳を鍛えることのほか、私たちに健康的な利益をもたらします。「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」の活性化です。
「NK細胞」とは、身体に悪影響をおよぼす物質(がん細胞やウイルス)を退治すると考えられている細胞のこと。NK細胞が活発に働けば「感染症」に対する抵抗力・免疫力が高まると考えられています。
8. 未知の世界へ旅すること
未知の世界へ旅することは「(4)新しいことに挑戦すること」と趣旨は同じです。二泊三日あるいは一週間、一ヶ月ほど新天地で生活することによって、生活環境を一変させ、新鮮な刺激で脳を活性化できます。
脳を鍛えるための留学!
留学は、学生の特権ではありません。「語学留学」や「エンジニア留学」という社会人が留学できるプログラムがあり、世界各地で社会人留学生は増えています。
留学すると、まるで日本とは異なる文化を五感で感得できます。言語をはじめ、食生活、生活様式、地理感覚、金銭感覚、交通規則など、留学はあらゆることが新鮮であるため、最高度の刺激を脳にもたらしてくれるでしょう。
9. 外国語を学習すること
成人後の脳と外国語の習得についての研究では、外国語を学習することで記憶を司る「海馬」の容積が増えることが示されています。つまり外国語を学習すると、記憶力が高まると考えられるのです。スウェーデンのルンド大学による研究も「言語学習が脳を成長させる」ことを示しています。
外国語を習得することでコミュニケーションが広がる
外国語を習得すると、習得した言語話者と直接つながることができます。
- 「中国語」であれば13億人。
- 「スペイン語」であれば4億人。
- 「英語」であれば3億人。
日本語の話者(母語とする人)が1億3千万人ということを考えると、英語を習得するだけでも、その倍以上の人と直接つながれるわけです。しかも英語は国際共通語ですから、教育環境が整っている国に生まれた人であれば、ほとんどの人とコミュニケーションができます。
10. よく噛んで食べること
「笑うこと」と同様で、「よく噛んで食べる」と脳の血流量が増えることがわかっています。また『医者に殺されない47の心得』の著者である医師の近藤誠氏は、
噛むことと脳の神経はつながっており、脳の活性化に一役買う
といいます。
「噛むことは脳の活性化に一役買う」というのは、医師らしい歯切れのよくない言葉でありますが、よく噛んで食べることは食物の消化にもよいため、健康であるための基本的なことです。ちなみに、「ごはんは一口分、三十回噛むべき」そうです。
【脳を鍛える方法のまとめ】
- 読書すること
- 運動すること
- 断食すること
- 新しいことに挑戦すること
- “多種多様な” 人とコミュニケーションをとること
- 我慢すること
- 笑うこと
- 未知の世界へ旅すること
- 外国語を学習すること
- よく噛んで食べること
終わりに
脳を鍛えることそれ自体を目的とすれば、いつまでも健康でいられるだけであり、この世に長く生存するだけです。その目的を創造力を上げることとするならば、ただ生存するだけではなく、世界の有為に、よく生きることができるのではないでしょうか。
令和三年 一月
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