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アーティストの精神の不安定について

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ある一つの生命を生むために苦しみに耐えねばならぬことを考えると、アーティストの活動あるいは創造は、あの陣痛に等しいと思われる程の苦しみに耐えねばならない。

 

《人の心は、悲惨な状況の中で力強く耐える人に、最も深く感動するようにできている》

セネカ著『人生の短さについて』

 

 

アーティストは、人に感動をもたらすことを念頭において活動する。これは家族を喜ばせんとして赤児を産む女性のきもちかもしれない。かれらにとっては悲惨な状況とても創造の糧であり(というのもそれが感動を生む源泉であるから)、その先の希望を望見し、苦しみはもはや苦しみではなく、むしろ喜びとなる。この感覚の倒錯ともいうべき状態は時々やり切れなくなるようで、それが実際、身の破滅や狂気となって現れるのである。

 

創作の過程における苦しみ

 

人を感動させんとするものは誰であれ苦しみに耐えねばならない。といっても感動をねらう〈活動家〉と〈アーティスト〉と双方の目的には目に見えるほどの違いがあり、それがして双方の精神に安定力の違いを生み、感情を抑制または爆発させることになるのである。

学生やビジネスマンのような活動家にとって目的とは、その過程から結果に至るまで数値に変換可能な、定量的なものである。何でもめられたことを定められた時間におこない、そうして目的に至る。だから活動家の苦しみは規則による束縛つまり閉塞感によるものである。

これに対しアーティストの目的は、ある程度は数値化できるけれども、ほとんど定性的であり、ぼやけてはっきりとしない。かれらのなかでも優秀な人は、活動家のように一日を定めた規則に従って行動する。しかしどれほど規則に従って行動したとしても、アーティストの活動はひらめきを頼りにするものなので、神の啓示をひたすら待つ巫女のように、一閃ひらめくまでひたすら忍従しなければならない。もしかすると神の啓示めいたものを一生の間に授かることはないかもしれない。それでもひたすら忍従しなければならず、これこそがアーティストの苦しみであり、アーティストの精神を不安定たらしめる原因なのである。

 

アーティストは知性の本質に逆らう

 

私たち人間は、単純に生活することを除いて目的をもって動くことができる唯一の動物である。これを可能たらしめるものは知性であり、知性の本質は何か明らかな目的をもつことである。その目的が明らかであればあるほど精神に安定力をもたらすことになる。

考えると、人間を除くすべての動物は目的をもたなくても無気力になることはないが、人間は目的をもたなければ無気力になってしまう。学生やビジネスマンのような活動家は、その目的を既存の概念に定めるため、目的に至るために今何をすればいいのか明らかである。ところがアーティストは、その目的を未知の概念に定める。それは存在しない架空の大学に向けて入学準備をするようなものである。いいかえるなら目的に至るための道がまだ整備されていない。

今日もアーティストは、目的を措定し、それを希望の縁として、闇雲の中、野草を分け、明日に向かっている。

 

令和三年 八月

 

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