文学の旅に行きませんか

新しいことへ挑戦を

詳しく知る

森鴎外『安井夫人』の要約と解説

この記事は約3分で読めます。

 

『安井夫人』は、江戸時代の儒学者で近代漢学の礎を築いた安井息軒そっけん(字は仲平、1799〜1876年)の生涯を描いた森鴎外による伝記小説である。大正三年に発表された。仲平の生涯を主調に、仲平に仕える夫人佐代の心境をアクセントとして物語は進められる。

 

外部リンク:森鴎外『安井夫人』青空文庫

 

安井夫人の要約

 

安井仲平は容姿こそ醜いが学殖の豊かな儒者である。背の高く、色の白い、目鼻立ちの立派な兄・文治とは一対の様相を呈している。

学問修行を一通り終えて仲平が二十九歳になる頃、翁が息子に嫁を取ろうと言い出した。嫁の候補として川添家の姉娘あねむすめとよがあげられたが、期せずして妹娘いもうとむすめの別品佐代と縁談が成立する。十七の佐代は三十の仲平の花嫁となり安井夫人となった。

仲平の学殖は世間に認められ、出世に忙しくなり、職業や住居は転々とする。仲平は無欲淡々という性分であり、収入が増しても生活は質素そのものである。

そういう夫に仕える佐代は衣食住の奢侈を何らも要求しなかったが、未来に何物かを望んで五十一歳で瞑目した。

 

安井夫人の解説

 

安井夫人(佐代)とはどういう女性なのか?」というのが本作を読み終えたあとの素朴な感想であるはずである。

その夫、仲平は学殖こそ豊かだが、背の低い、色黒の、独眼という容貌怪異の不男である。そういう男の縁談をもちこまれると世人の女性はためらうか肯んじないであろう。

仲平の縁談は当初、佐代の姉の豊にもちこまれた。もちろん豊は断固拒否した。しかし豊の妹である佐代が〈わたしでよろしければ〉と思いがけなく縁談を申し入れたのである。佐代は十六歳の美人で無口で控目で貞潔という女性であり、どう見ても、不男の仲平とは不吊合である。

佐代は何を望んで仲平との結婚を承諾したのであろうか?

佐代には尋常ではない望みがあった。それは仲平の立身出世に賭して得られる奢侈ではない。本文を読むかぎり、佐代の望みというのは、世人の望むものを眼下の芥それ以下のものとする、一切の弁識を排した空に生きることであろう。それは言うなれば、後代の文士・岡本かの子の永年の主題となる生き方に近似している。「使命に尽くす生き方」が沙代の望みであると思われる。

もし、佐代が仲平の縁談を肯んじなければ、それは長らく宙に浪浪と迷うたであろう。佐代は奢侈に身をやつすこともしなかった。仲平という男に身を献ずることを使命に思ったのである。

たほう、夫の仲平にしてみれば、佐代のような良妻と縁があったのは、彼の無欲恬淡な性分ゆえである。

使命に尽くして生を貫徹した夫人にしてみれば、世人の望む諸々のものを塵芥とも思いはしないだろう。

 

令和二年 十一月

 

「本を読むのが苦手」という方におすすめ!
Amazon Audible(本は、聴こう!)

本を読むのが苦手......という人にこそおすすめ!
今話題の作品から古典作品までをプロの朗読で楽しめる!
12万を超える作品が聴き放題!
無料キャンペーン開催中!
音楽のように、いつでも、どこでも本を再生できる!

新しいことに挑戦する勇気をもって、いまオーディオブックで本を聴きはじめてみませんか

ライフカクメイをフォローする
ライフカクメイ

コメント

タイトルとURLをコピーしました