科学の進歩とプラネタリーバウンダリーについて

先月、七月にアマゾン創業者のジェフベゾス氏は自身のベンチャー企業によるロケットに乗って宇宙旅行したようである。これは地球を眺める特権を宇宙飛行士のみならず一般人に与えてくれる誠に魅力的なニュースであった。

およそ百年前の二十世紀初頭、ライト兄弟は人間社会に飛行能力をもたらした。それは六十年後、旅客機として社会に普及し、一般人も搭乗できるようになる。科学の進歩の速い現代、飛行機よりもはやく、宇宙飛行機が人間社会に普及するのはもう間もないであろう。このまま人びとは宇宙服を身にまとい、休日には宇宙旅行をするかもしれぬ。なるほど、宇宙旅行は魅力にあふれている。もしかするとあの浦島伝説の竜宮体験を人びとに約束してくれるだろう。だが、ここで私たちは重大な何かを見落としている。いや、それをあえて見まいとしているのかもしれない……

自然は容赦しない

人間社会を観察すると、毎日様々なる出来事が勃発しながらも全体としてみると平和である、それゆえに現在、社会は存続している。そしてこの社会には政治家や芸術家、犯罪者や一般人などいろいろな人たちがいる。社会の存続を危ぶむような人たちは–––自然法であれ実定法であれ法の犯罪者は–––社会から干されるか、もしくは消滅の運命にある。ところが一個の生命は地球よりも重いとされてから、死刑制度は見直され、この社会において法による生命の消滅は数少なくなってきた。これが意味することは、人間社会における重大な誤ち（犯罪）とても生命の消滅になりえない、ということである。これは容赦のある社会である。これをより広げてみて考えるなら、もし地球という一個の生命が、自然において宇宙において、何か重大な誤ちを犯したらどうなるか？地球内生命体がそのほかの様々なる星々に影響を与え、人智の及ばぬ大いなる宇宙の法則に叛くなら、この地球という一個の生命も人間社会における一人の犯罪者のように、宇宙における消滅の対象となるかもしれないのである。そして自然に容赦はない！

地球を眺めることは魅力に満ちている。しかしこの魅力に幻惑されるばかりでは、地球の生命ももう間もないであろう。

令和三年　八月

【追記　令和三年九月】

先に記した〈地球という一個の生命も人間社会における一人の犯罪者のごとく、宇宙における消滅の対象となるかもしれない〉については「プラネタリーバウンダリー」という概念がある。これは人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義したもので、2009年に環境学者ロックストロームらによって発表されている。プラネタリーバウンダリーについてWikipedia