臓器の提供が不足しており、今この瞬間にも臓器の不足によって亡くなられる人はいます。
臓器移植を待つ人が亡くならない世界をつくる方法は、ブタの体内でヒトの臓器をつくり、ブタの体内でつくられた臓器をヒトに移植する「異種移植」をすることです。
生物学者のルハン氏は「異種移植」にまつわる問題を解決するために研究を進めています。「異種移植」によってブタの生命と引き換えにヒトを延命させることは果たして賢明であるでしょうか?
臓器移植を待つ人が死なない世界を創る方法
プレゼンター | Luhan Yang:生物・遺伝学者 |
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配信日 | 2018年4月 |
ジャンル | 科学、遺伝子工学 |
動画の時間 | 13:42 |
ポイント | ・臓器移植 ・生命倫理 |
ブタの体内でヒトの臓器を作る二つの理由
生物学者のルハン氏が述べるには、ブタの体内でヒトの臓器をつくる理由は二つあります。それは第一に、ブタの臓器がヒトの臓器の大きさと同じくらいであること、第二に、ブタとヒトとの生理機能が似ていることです。
現在アメリカ合衆国だけでも115,000人を超える患者が臓器移植を必要としており、ヒトの臓器だけでは賄えず、足りない臓器をブタの臓器で賄うことを試みています。
「異種移植」の二つの問題点
しかし「異種移植」には二つの問題点があります。それは第一に、ヒトの免疫システムがブタの臓器に対して拒絶反応を起こすこと、第二に、すべてのブタが自然に持つウイルス(ブタ内在性レトロウイルス「RERV」)がヒトに感染する恐れがあることです。
ルハン氏によれば、このウイルスは「HIV」と同様にウイルス流行を引き起こす可能性があると考えられています。
現在ではすべてのブタが自然に持つウイルス(PERV)を消すことに成功しているそうです。
つまり残りの「ヒトの免疫システムがブタの臓器に対して拒絶反応を起こすこと」を解決できれば「異種移植」が現実的に可能となり、臓器移植を待つ人が亡くならない世界をつくることが可能となるわけです。
「ブタ1匹」か「ヒト8人」か
われわれ人間にとっての問題点は上記の二つでありますが、ブタにとっての問題はどうでしょうか。ルハン氏の主張を聴いてみましょう。
So imagine one pig can save eight people’s lives. In addition, similar to human donation, if we only harvest one kidney from the pig, the pig can still be alive
【翻訳】1匹のブタが8人の生命を救うことができると想像してみてください。 さらにいいますと、人間の臓器提供と同様に、ブタから腎臓を1つだけ収穫したとしても、 そのブタはまだ生きている可能性があります。
これは「ブタの生命」と引き換えに「ヒトの生命」を救うという「生命倫理」にまつわる問題です。
ルハン氏は臓器提供を待つ人のために、人命救助のために「異種移植」の研究を続けているわけであり、人道にしたがっていると思われます。それを咎めることは誰もできないでしょう。しかしブタの生命を犠牲にしてまでヒトを生かす価値はあるのでしょうか。ヒトが延命することで、ブタ一匹の生命をはるかに超える生命が犠牲になることが予想されます。
この問題は被害者が人間ではないために、正当防衛のような主張がなされず、第三者の立場からでは否定することはむずかしそうです。
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