AI(人工知能)開発が進むにつれて、今ある仕事の49%が2035年ごろまでに消滅するといわれています。
仕事が消滅すると私たちの働き口がなくなり、収入源が途絶えます。
となると衣食住にかかる費用が払えなくなり、私たちは生活ができなくなりますよね。
そこで政府が考えていることが「ベーシックインカム(Basic Income)」という制度の導入。
今ある仕事が消滅して私たちが働けなくなれば月に7万円ほどのお金が政府から支給されるのです。
この記事では、「ベーシックインカムとはなにか?」「(月に7万円の)ベーシックインカムは実現可能か?」「ベーシックインカムの問題点」をご紹介いたします。
ベーシックインカムとは?
ベーシックインカムとは、政府が国民に対して必要最低限のお金を無償で給付する制度のことです。私たちは政府から無償でお金をもらえるのです。
その額はおよそ7万円とされており、大人だけではなく子どもにも給付され、実現可能であるのかどうか議論がされています。
(月7万円の)ベーシックインカムは実現可能なのか?
結論から申し上げますと、月7万円のベーシックインカムは実現可能です。
当初、私はベーシックインカム制度の導入に懐疑的でした。実現なんて不可能だろうと。
「そもそも政府が今よりも歳出を増やせるのか?」
「ベーシックインカムの財源はどうするつもり?」
という疑問を持っていました。
そんな疑問をイチから明確に晴らしてくださった方が『AI時代の新・ベーシックインカム論』という本の著者であり 井上智洋 氏です。
同氏がベーシックインカムが実現可能であることを具体的に説明してくださります。
ベーシックインカムを実現させる具体的なステップ
月7万円、年84万円のお金を国民全体の総数1.2億人に給付すると、その額はおよそ100兆円となります。
100兆円を給付するためには税金、増税をする必要があります。
「100兆円分の増税は無理だろう!」と思う人は大勢いるのではないでしょうか。
この増税が実現可能である理由と、ベーシックインカム制度を正しく理解するために、井上氏は「増税額と給付額の差し引きを考えるべきである」と述べています。
具体的なステップは以下のとおりです。
財源は税金
まずは今よりも所得税率を25%引き上げます。
そして、ベーシックインカム導入にともない不要となる制度分のお金をベーシックインカムの給付金として使います。
既存の制度を廃止して36兆円をまかなう
ベーシックインカム導入にともない、既存の予算は不要となります。
以下の予算は「雇用」や「所得」を無理やり作り出す制度であるからです。
- 老齢年金16兆円
- 子ども手当1.8兆円
- 雇用保険1.5兆円
- 公共事業予算5兆円
- 中小企業対策費1兆円
- 農林水産業費1兆円
- 福祉費6兆円
- 生活保護費(医療費を除く)1.9兆円
- 地方交付税交付金1兆円
合計 約36兆円 が不必要となる。
しかし、まだ 36/100(兆円)しか集められていません。
残りの64万円はどうするのでしょうか。
所得税率を一律25%引き上げて64兆円をまかなう
現在、個人の平均年収はおよそ400万円(28年度国税庁調べは422万円)とされています。
所得税率が25%であると平均年収の人はそのうちの25%である100万円が税金として引かれます。
しかし、ベーシックインカム制度が導入されるため実質は
400万ー100万+84万=年収384万円
であり、年収400万円の人は給与から16万円分引かれるだけになるのです。
現在、所得税率の最高は45%であるため、25%引き上げると所得税率の最高は70%になります。
1億円稼いでも手元に残るのは3,000万円のみです(笑)
富裕層からの支持は得られないでしょう。
ベーシックインカムの本質は富の再分配
上の表からもわかるように、年収336万円以上の人は損をする。
そして、年収336万円以下の人は得をします。
いってみれば、ベーシックインカムの本質は富の再分配なのです。
ベーシックインカムの問題点
ここまでご紹介したベーシックインカム制度は、あくまでも雇用がある前提です。
雇用がなくなれば、働かずして、ベーシックインカムの給付金である7万円が私たちに無償で与えられます。
そこで問題となるのは「うつ病患者の増大」です。
うつ病患者の増大
雇用がなくなり、月にもらえる金額は7万円とします。
極度にオートメーション化した社会であれば、レジャー施設や豪勢な食事にかかるお金は1,000円~2,000円くらいになるかもしれません。
政府も対策を施すことでしょうから、私たちが生活していくには困らないとは思います。
しかし、現在のような個人化の社会においては、労働から解放されて生活に困らなくてもコミュニティが形成されず、個人の欲望を満たすため各自が(自分勝手に)好きなことを行うのではないでしょうか。
つまり個人化の波が加速するのです。
また、そもそも好きなことが見つからない人も大勢いると思います。
そうした人たちが自由にあふれた労働から解放された社会に放り込まれても、この社会でなにをしていいのかわからない迷子の状態になります。
こうした迷子状態の人たちは次第に「うつ病になるのではないか?」というのが私の見解です。
ただ、対うつ病対策の支援制度の拡充、支援団体の発足などにより問題はそれほど深刻にはならないと思います。なにしろ私たちは暇を持て余しているのですから(笑)
こうしたお互いを助け合える社会になっていけば、誰もが平等な社会の実現に近くことでしょう。
ベーシックインカム=共産主義社会の実現
ベーシックインカムは社会主義・共産主義の考えが反映された制度でもあります。
全員が平等である社会を実現するための一助となるわけです。
2017年に行われたベーシックインカムに関する意識調査では、自由民主党はベーシックインカム制度の導入を支持していません。
一方で、共産党はベーシックインカム制度の導入を支持しています。
終わりに
ベーシックインカム導入後の功罪について議論の余地はありますが、労働から解放されて自分の好きなことに打ち込められる人生が訪れれば、そしてそれを周りと共有できるならば、私たちの未来は明るく、良い兆しがあるといえます。
ただし、この記事でご紹介したとおり、労働から解き放たれた人が陥る「迷子の状態」はなんとしても避けなければなりません。
迷子の状態を避けるために、人生において自分がなにをしているのが一番幸せなのか、ベーシックインカムが導入される前にしっかりと考える必要があります。
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