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『近代日本人の美意識』の要点整理

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近代日本人の美意識はどこから生ずるのか?

 

近代日本人の美意識」はどこから生まれたのか?あるいはどこにみられるのか?

本書に述べられていることを参考に、本書の要約と「近代日本人の美意識」についての考察とを以下に記したい。

 

「近代日本人の美意識」はどこにみられるのか?

 

本書によれば「近代日本人の美意識」は「遊び心」や「宗教意識」「愛と性」などに顕著にみられる。

「遊び心」や「宗教意識」から来る美意識は「茶の精神(わび)」を、「愛と性」から来る美意識は「死」を考えれば理解がいっそう深まるかもしれない。

 

茶の精神(わび)|求心的な自己の探求

 

極小空間の中で自由を抑圧すること、すなわち自己の求心的な探求は千利休の「茶の精神(わび)」にみられる。

 

1587年ごろに豊臣秀吉が開催した「北野の大茶会」は茶室や野点の席が800席を超える大規模の外向的なイベントである、これに対して千利休の茶は畳二畳の極小空間で内向的に行われれていた。

畳二畳という極小空間において、千利休の「茶の精神(わび)」は自己の限りない求心的な探求をする。

これによって生まれる「抑圧された自由」と「求心的な探求」とが重なり合うところに「美」が感じられて、それが宇宙大の開放感へとつながるそうである。

 

ところで上記の茶道の動画において、茶道の先生は「茶道における美」について以下のように語る。

 

 

日本の感覚というのは、“省略の美” なんです。盛り込むのではなく、ヘズって剥ってこれ以上剥れないところに百花をみる、というのが楽しみ方なんです。

 

 

 

マゾヒスティックな自閉「粋」

 

求心的な自己の探求は、江戸時代に生じた美意識である「粋」にもみられる。

たとえば江戸時代のファッションは、上着はあまり目立たない地味な色合を、しかし下着は流行の先端をとり入れた、何か価値のあるものを身にまとっていた。

価値のあるものをみずから見せびらかすのではなく、故意に隠して、だれかに発見してもらうのを待つ。それにより余裕をみせる。それがマゾヒスティックな自閉であり「粋」である。

自分を外ではなく内に向けること、端的にいえば「禁欲主義」であるが、そこに「近代日本人の美意識」がみられる。

 

 

これは日本だけではなく西洋にもみられそうで、美の背景には死があり、「死」に私たちは美を感じるそうである。

 

茶の歴史を眺めてみれば、茶人の非業の死の歴史がいくつか記されている。

 

  1. 茶の文化財としての価値をつくりだした信長
  2. 茶道を大成した千利休
  3. 千利休の高弟である山上宗二
  4. 古田織部
  5. 茶を愛した井伊直弼

 

こうした背景(死)と、求心的な自己の探究(茶の精神)とが重なり合い、私たちは茶に美を感じるのかもしれない。

 

なぜ美の背景には「死」があるのか

 

ところで美の背景に死がある理由とはなにか?それは美が生まれた原点にあるのかもしれない。『日本書紀』によれば、イザナミノミコトの葬儀では「音楽」や「舞踊」をもって死者をいたわっていたとされている。

音楽と舞踊によって死者をいたわることは、古く大王が亡くなり、大王の魂をいたわるときにもみられる遊びである。つまり、かつて「死」は「遊び心」に結びつけられていたのである。

また本書によれば、目に見えないものとの交歓が「遊び心」の本義であるとのこと。これらが現代に生きる私たちの〈美意識〉につながっているのかもしれない。

 

俳句の目的|文芸の目的は求道ではなく美にある

 

俳人の高浜虚子いわく「文芸の目的は〈真〉ではなく〈美〉である」とのこと。ひとたび文芸の目的が求道(宗教的悟り)にそれてしまえば、文芸の香気は消え去ってしまうそうである。

 

終わりに。美を学ぶ理由について

 

「自分の探求」というのが人生の永遠のテーマであるならば、美について探求することは自分を深く知ることにつながるのではないかと思う。「自分がなにに魅せられるか」美意識は、人間および個人の性質と生まれ育った環境に依存すると思われるため、これほど自分を探求するのに適した素材はないと思われるからである。

 

 

 

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