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ストレスを力に変える方法|ストレスをストレスとして捉えないために

この記事は約6分で読めます。

ストレスという文明化の代償

 

わけあって、劣悪な環境を変えられず、ストレスの被害者となっています。家庭でも、職場でも、終日、精神的あるいは肉体的に苦痛であること・ストレスを被っています。ストレスから逃れられない……。そういう場合、いかにしてストレスに対応すればよろしいのでしょうか。ストレスから逃れられなければ、ストレスと対峙して、ストレスをみずからの精神を向上する糧とするしかありません。すなわち、ストレスを有害なものと思うのではなく、ストレスを有益なものと思うのです。

こういう精神論的な説明は、酷くストレスを被っている人には、不愉快に思われるでしょう。「ストレスを有益なものと思えないからストレスが溜まってゆくのだ」と思っているはずです。しかし、ストレスの原因とは、そのほとんどが私たちの観念であり精神的なものです。実際に悪ではない行為を悪として捉えていれば、その行為の後、その人は悪いことをしたのだと、悪行でもないにもかかわらず、罪の意識から苦悩します。

ですから、ストレスに対する精神的な態度が変われば、ストレスが有害なものから有益なものへと変わるはずです。その意識改革が、本記事の目的であります。

 

ストレスはつねに有害ではない

 

そもそも、ストレスは身体につねに有害ではなく、身体に有益に働きもします。

ストレスの程度が軽度であれば、試験やスポーツの大会に臨むような緊張状態となり、平常時よりも高い集中力を発揮することができます。

自宅よりも会社(図書館)で仕事(勉強)をするほうが、軽度なストレスを得られるため、生産性が向上するのと同様です。「ストレスはすべて有害」という観念を、まずは払拭してください。むしろストレスは恩恵を与えてくれます。

 

ストレスは慢性的につづくと有害である

 

ストレスは重度であり慢性的傾向を帯びていると、身体に有害に働きます。

その原理はこうです。ストレスを被ると、脳のおそれの役割を担っている「扁桃体」という箇所が活性化します。これが転じて、海馬という箇所が萎縮しはじめます。海馬の仕事は扁桃体の働きを抑えることです。が、ストレスによって萎縮した海馬は、その力が弱くなるため、このすきをついて扁桃体は暴走を(おそれを感じ)はじめます。すると、扁桃体の暴走によって、さらなるおそれが生じ、さらにストレスを感じてしまいます。するとまた、ストレスを感じて海馬の力は弱くなり、扁桃体の暴走を止められなくなる…..

これを脳科学者は「負のスパイラル」と呼んでいるようです。そのほか、慢性的にストレスを感じていると、脳の構造や脳のサイズ、脳の機能が変化すると言われています。

ですが、ひとたびストレスを有益なものとして捉えることができれば、ストレスの負のスパイラルに陥ることは考えられず、よしんば、負のスパイラルに陥ったとしても、それが有益な現象であると知ってさえいれば、ストレスは軽くなるでしょう。

 

ストレスを有益と思えば、有益となる

 

ある健康心理学者は、ストレスをストレスとして捉えなければ、それはストレスではなくなり、むしろ身体に有益であると言います。

 

 

……研究者は、8年に渡って死亡者数を追跡し、18万2千人のアメリカ人がストレスからでなく、ストレスが身体に有害と信じていた事によって死期を早めたと判断しました。これは1年でおよそ2万人の死者数に上ります。

……はっきり言える事は、意義ある事を求める方が、ただ不快感を避けようとするより健康には良いということです。これが一番いい決め方です。そして、人生の意味が見い出せるものを追求して、そこで経験するストレスに対応できると自分を信じる事です。

 

How to make stress your friend

 

ストレスを我慢して得られること

ずいぶん前に『前頭葉を鍛える方法』という記事を投稿しました。前頭葉(脳)を鍛える方法として〈我慢すること〉が有効であると書いています。fMRIを用いた研究によって、我慢することが、意思決定や感情の制御、認知などを司る前頭葉を活性化させられると考えられています。実際に、ある大学のマシュマロの実験では、マシュマロを食べることを我慢できた被験者は、我慢できなかった被験者と比べて、その後に受けたSAT(テスト)で優れた成績をおさめているのです。

 

したがって、ストレスを我慢するときは、「前頭葉(脳)を鍛えるぞぉ〜!」と、みずからの精神を鼓舞するように、ストレスを有益と思うことが身体に有益に働くというわけです。ストレスをストレスとして、苦悩として捉えていれば、実際にストレスが身体に有害に働いてしまうのであります。

問題は、身体がストレスを被る状態にあって、そのように楽観的な態度でストレスを捉えられるか、という点です。

 

ストレスを楽観的に捉えるためには、ストレスが身体によいことを見出す必要がある

 

例として、私の個人的問題に「騒音」があります。耳栓をしてもまともな睡眠をとることはできません。睡眠不足で脳の活動も低下するため、楽観的な態度をもってストレスを捉えることは聖人君子にもならないかぎり無理です。

しかし、ストレスから、ストレスを我慢することから、今よりも精神的快楽を見出せればそのかぎりではありません。

つまり、今の精神的快楽は「ストレスを我慢すると前頭葉(脳)を鍛えられる」ということです。しかしそれだけでは騒音問題を対応できません。だから、ストレスを有益なものに転換するために、さらなる精神的快楽を(ストレスから)見出す必要があるのです。

 

ストレスがなければ人生は平凡|人生を音楽的に!

 

そうして見出したのが、人生を〈音楽〉あるいは〈演劇〉に喩えることです。これらの通有性とは波瀾万丈であり、筋が上下に浮沈しながら物語が進行してゆきます。

騒音問題とはーーストレスとはーーいってみれば、私の人生という音楽のAメロやBメロを担当する悲劇的な序曲であり、その先に待ち受けるサビを層一層とうずたかく盛り上げる役割を果たします。

 

ここにローマの哲人セネカの強力な助言があります。

 

たえざる不幸は、ひとつの恩恵を与えてくれます。――たえず苦しめ続けることによって、ついにはその人を頑強な存在にしてくれるのです。

悲惨さそのものが、いわば聖者の証しとなるのです。というのも、われわれ人間の心は、悲惨な状況の中で力強く耐える人に、最も深く感動するようにできているのですから。

 

セネカ著『人生の短さについて』心の安定より

 

もしも騒音問題が現れなかったならば、私の精神を向上させる糧が現れないわけであり、人々を感動させる力を身につけられないのです。また、私の人生は一定不変の音楽となり、サビの盛り上がりは平たい、およそ音楽的とは思えない、つまらない平凡な人生となるでしょう。

「ありがとう、騒音!」と、だから言いたいところですが、現実はそう甘くなく、ストレスは積み重なっているため、さらなる精神的快楽を見出す必要があります。

 

令和二年 十二月

 

 

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