いつもはCMを全く楽しみにしていませんが、そのCMだけは別でした。
そのCMとは2018年4月から始まったハズキルーペという拡大鏡の宣伝!
(舘ひろしさん主演CMは2017年12月、武井咲さん出演CMは2018年10月ごろから)
拡大鏡とは縁がない人でも、ハズキルーペのCMに目を奪われてしまいます!!
「ハズキルーペのCMに、なぜ目を奪われてしまうのか」
ハズキルーペのCMを繰り返しみて研究することで
そこにある数多くの戦略を見出だす事ができました!
今後それらを、プレゼンテーションの極意と呼ぶことにします。
すでに知っている技もあるかもしれませんが、ハズキルーペのCMから学べることは山ほどあります!
ご自身のプレゼンテーションやセールストーク、マーケティング戦略、文章を書くことにおいても役立ちますので、ぜひ参考にしてみてください!!
まえがき
ハズキルーペのCMで学ぶ「プレゼンテーションの極意」を実際のプレゼンテーションで全てをマネすることは難しいです。
というのも、ハズキルーペのCMに出演している渡辺謙さんの怒号をマネすれば、聞き手に引かれてしまいます。
また、女優の菊川怜さんをマネして、「ハズキルーペだぁ~いすき」のような発言をしてしまえば、その企画は即座にゴミ箱行きとなるでしょう。
そのほかには、時間の制約もあります。
ハズキルーペのCMは60秒ですが、実際のプレゼンテーションは60秒とはいきません。
そのため、実際のプレゼンテーションで「活用できる技」と「活用できない技」を分けてご紹介することとします!
ハズキルーペのCMから学ぶ「活用できるプレゼン技」
ハズキルーペのCMを研究してわかった、活用できる7つのプレゼン技です!
- 共感作用
- オーバー表現
- ギャップ方
- リピート方
- 言葉の強弱
- 内集団バイアス
- 数字の「3」マジック
共感作用
「世の中の文字は小さすぎて読めない!」
これがハズキルーペのCMで使われる共感フレーズです。
人の心は論理だけでは動きません。
人は共感することによって、話者の話に耳を傾けようとします!
これは行動経済学という学問でも明かされています。
共感フレーズを入れることで、
「あぁ、この人は私の気持ちをわかってくれる!」
と、聞き手は話者のことを信頼しようとします。
そして、その後に続く話者の話に、聞き手は耳を傾けようとします。
「世の中の文字は小さすぎて読めない!」という共感フレーズを入れることで、
「世の中の文字は小さい」と感じている聞き手の気持ちを理解して、話者と聞き手の間に信頼関係を構築します!
多少ニュアンスは異なりますが、共感作用は心理学用語で「バーナム効果」とも呼ばれています。
バーナム効果とは、誰にでも当てはまる曖昧なことを、自分だけに当てはまることと捉えることです。
バーナム効果は占い師がよく使う手法です!
たとえば、ある女性が占い師に「彼氏との結婚について」相談するとします。
すると占い師は「あなたは今、恋愛に悩んでいますね?」と女性に告げます。
「結婚について相談しているのだから、恋愛について悩んでいるのは当たり前だろう」と、みなさんは思うことでしょう。
しかし、これにより女性は「あ、悩んでるかも・・・」と感じ、以後占い師の言うことに耳を傾けます。
これがバーナム効果です!
共感作用とバーナム効果に共通するポイントは、聞き手に「今、話していることは私のことなんだ」と思ってもらうことです!
オーバー表現
私たちが生きる高度な情報社会において、生半可な情報(曖昧な表現)は生きていけません。
高度な情報社会に生きる私たちは、情報を取捨選択するスキルが知らずのうちに磨かれています。
そのような中、ただ商品や企画の魅力を伝えるだけでは、聞き手の心をつかむことはできません。
「へぇ、そうなんだ」と、聞き手の関心は薄いです。
ハズキルーペのCMでは、商品(ハズキルーペ)の強みを、渡辺謙さんが体の動きを大きく使って表現しています。
渡辺謙さんがハズキルーペをかけて洋書を読むときに、喜びのあまり、後ろに飛び跳ねます!(0:15 大きく見えちゃうんです!)
※この洋書はシェイクスピアの『マクベス』という作品です
また、菊川怜さんがハズキルーペをうっかり下敷きにするときも、ハズキルーペが頑丈であることをオーバーに表現しています。(0:37 ふふぁ。すごい!)
オーバーに表現することで、「えっ!?そんなにすごいの?」と聞き手の関心を引くことができ、ハズキルーペの何がすごいのか印象に残せます!
ただし、オーバー表現の注意点は、商品や企画に魅力(中身)がなければ形だけになるということです。
「期待した割に大したことないね」というように信頼を失うことにもなります。
あくまでも、中身がある前提のオーバー表現です!
ギャップ方
ギャップというのは言葉の高低差のことです。
言葉に高低差をつけることで、伝えたいことを際立たせ、強く印象付けます!
これは心理学用語である「ゲインロス効果」に似ています。
ゲインロス効果とは、最初にマイナスの印象を与えて、その後にプラスの印象を与えることで、より良い印象を相手に残すことです。
シリーズ累計100万部売れた本『伝え方が9割』においても同じことが述べられています。
第44代アメリカ大統領を決める最終演説で、オバマ大統領は
「これは私の勝利ではない」「あなたの勝利だ」
と、ギャップ方を巧みに使っています。
ほかには、「場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ」(クロネコヤマト)があります。
ハズキルーペのCMですと
「世の中の文字は小さすぎて読めない!」「でも、大きくみえちゃうんです!」
というように。
ギャップ方のポイントは、伝えたい言葉の前に、伝えたい言葉とは反対の言葉を言うことです。
ギャップ方を使うことで言葉のエネルギーが高まり、商品や企画の魅力が際立つのは間違いないでしょう!
恋愛でもギャップ方を試して見るとよいかもしれません♪
(ギャップ萌え)
リピート方
ハズキルーペのCMで、何度もリピート(繰り返し)されている言葉が2つあります。
「すごい」と「ハズキルーペ」です。
「すごい」は3回、「ハズキルーペ」は5回使用されています。
「すごい」「ハズキルーペ」という言葉をリピートすることで、
聞き手は「ハズキルーペがすごい」ということを無意識に受け入れています。
また、同じ言葉を何度もリピートすることで、聞き手の記憶に残りやすいです!
これはAKB48の歌から
「会いたかった~会いたかった~会いたかった~YES♪」
わかるでしょう。
ただし、プレゼンテーションやセールス文句で使う場合、同じ言葉を連呼するのは不自然です。
そのため、聞き手が不快に思わない程度にリピートすることがポイントです。
また、「すごい」という言葉の使い方には注意が必要です。
「すごい」をリピートされても、聞き手には何がすごいのか理解できません。
ハズキルーペのCMでは、ハズキルーペのすごさが実例付きで表現されているため、聞き手はすごさを理解できます。
言葉の強弱
日本人の話し方の特徴として、声のトーンが一定であることが挙げられます。
すべての言葉を一定のトーンで伝えると、ただの連絡事項と変わりません。
言葉にメリハリがなく、伝えたいことが印象に残りにくいです。
ハズキルーペのCM内で、渡辺謙さんは言葉の強弱を巧みに使いこなしています。
<以下はハズキルーペのCMを文字起こししたものです>
本当に世の中の文字は小さすぎて読めない(大)
でしょ?(小)
(中略)
でも、ハズキルーペをかけると、世界は変わる。(中)
大きく見えちゃうんです(大)
私も世界が変わりました(中)
すごい、はっきりきれいに見える(大)
(中略)
すごいぜ(大)ハズキルーペ
言葉に強弱(メリハリ)を付けることにより、伝えたいことが聞き手の印象に強く残ります!
また、ハズキルーペのCMの長さは60秒と短いです。
一般的に、60秒間で話す語数はアナウンサーで300字前後といわれています。
ハズキルーペのCMでは228字です。(ナレーション含む)
このことから、語数をかなり絞っていることがわかります。
語数を絞ることで余分な情報がカットされ、伝えたいことが整理されます!
内集団バイアス
内集団バイアスとは、自分が所属している集団(日本)は、外集団(外国)に比べて、能力が優れていると評価することです。
ハズキルーペのCM内で、「さすがMade In Japan」や「日本の高度なテクノロジーが作りました」という言葉があります。
「日本はすばらしい」と肯定的に評価することで、日本という集団に所属している自分も評価されていると錯覚します。
これにより、聞き手の自尊心(プライド)が満たされ、話者に信頼を寄せます!
内集団バイアスのポイントは「内輪ネタ」を探すことです。
内輪ネタを披露することで、「私たちだけが知ってること♪」という優越感に浸ってもらい、仲間意識を芽生えさせることができます。
数字の「3」マジック
日本人は「3」という数字を好む傾向があります!
というのも、昔からのことわざに
- 「石の上にも三年」
- 「早起きは三文の得」
- 「三つ子の魂百まで」
- 「三度目の正直」
などがあり、例を挙げればきりがありません。
また、「3」という数字は、説得をするときの根拠として極めて有効です。
何かを主張するとき、根拠が1~2つであると説得力に欠けます。
たとえば、「なぜ3という数字が良いのですか?」という問いに
「3は日本人が好きだからです」という返答は説得力に欠けます。
一方で、根拠が4つ以上であると聞き手が覚えきれず、逆に説得力がなくなります。
グロービス経営大学院教授である嶋田毅氏の著書『MBA100の基本』においても、根拠は3~4つが望ましいと述べられています。
ハズキルーペのCMでは、
- ハズキルーペの拡大率は3種類
- 3年新品交換保証
パンフレットでは、
- 選べるレンズの大きさ3種類
- 特徴として「大きく見える」「広い視野」「衝撃に強い」
など、3を積極的に導入しています。
ハズキルーペのCMがはじまると、主演の渡辺謙さんと助演の菊川怜さんが歩いて登場するシーンがあります。
正確な根拠はありませんが、ここにプレゼンテーションに大切な「間」を取る秘訣が隠されていると踏んでいます。
これは日本テレビ系列の「踊るさんま御殿」という番組でも見られることです。
司会者のさんまさんが番組開始と同時に歩いてくるシーンがあります。
歩いて登場することで、「これからがはじまりですよ」ということを聞き手の意識に芽生えさせているのかもしれません。
ハズキルーペのCMから学ぶ「活用が難しいプレゼン技」
ここからは、実際のプレゼンテーションに活用が難しい技をご紹介します!
- 同調圧力
- 代弁効果
- 感情表現
同調圧力
同調圧力とは、意思決定をするときに、知らないうちに多数派の意見に賛同してしまうこと。
カンタンにいうと、「みんながやってるから」「みんなが買っているから」など、
私が〇〇する理由は、みんなが〇〇しているから、ということです!
同調圧力について、アニメ『クレヨンしんちゃん』の風間トオル君はこのように語っていました。
「同調圧力は日本人特有の気質だよ!」
ハズキルーペのCM内にいる聴衆を騒がせることで、同調圧力を発生させます。
(聴衆を騒がせるというのは、拍手や「ウォォ」といった声のことです)
聴衆を騒がせることで、「これだけの人数がハズキルーペをすばらしい製品と感じている。だから、自分もすばらしい製品と感じる必要がある」と聞き手に錯覚させます。
「売り上げナンバーワン」や「多くの人に支持されています」というキャッチコピーは、同調圧力の典型でしょう。
聴衆を騒がせるような同調圧力を使うのは難しいかもしれませんが、後者のキャッチコピーは手軽に使えそうです!
代弁効果
代弁とは、自分の代わりに誰かが何かをしてくれることです。
人間には生まれつき、不安や不満を軽減する心理的メカニズムが備わっています。
(防衛機制)
ハズキルーペのCM内では「新聞も企画書も(文字が)小さすぎて読めない!」と、渡辺謙さんが怒号します。
これにより、新聞や企画書の文字が小さすぎて読めず、不満を持つ人たちの意見を代弁します!
誰かが自分の不満を受け止めてくれて、その不満を発信してくれるほど気持ちの良いことはありません。
一般的に、私たちは不満を持っていても、世の中に対して大々的に怒号できません。
それをテレビCMという大規模なメディアが代弁してくれます。
これにより、不満を持っている聞き手は、話者に好感が持てます!
感情表現
ここでいう感情表現は、顔の表情のことです。
ハズキルーペのCMを観ていると、渡辺謙さんが洋書を読んでいるときに表現する「喜びの表情」、菊川怜さんがハズキルーペをうっかり踏んでしまったときに表現する「驚く表情」、そのどれもが聞き手に強い印象を与えています!
これをSNSでのやり取りでたとえます。
あなたの友人や同僚が、絵文字なしで感謝のメッセージを送ってきたとします。
「さっきはありがとう。助かった。」
これでは、「本当に感謝してるの?」と疑いたくなります。
(もちろん感謝を求めてはなりません)
では、こちらはどうでしょう。
「さっきはありがとう🤗助かった😆」
表情をつけることで、うれしさがしみじみと伝わることがわかります!
私たちが持つ感覚器官の中でも、視覚の役割はとくに大きいです。
不満があるところは、不満そうに。
革新的な意見を言うときは、驚くように。
感情をうまく使うことで、聞き手に強い印象を与えることができます!
まとめ
以上ハズキルーペのCMで使われているプレゼンテーションの極意10選をご紹介させていただきました。
プレゼンテーションを行う場所にもよりますが、仲間内で行うプレゼンテーションでしたら、今回ご紹介した極意を使ってみるのも良いと思います!
しかし、プレゼンテーションを社外で行う場合や、その企画が一大プロジェクトの場合であれば、自分が慣れている形式でプレゼンテーションを進めて行くのが良いでしょう。
ただ、ハズキルーペのCMをマネすれば、印象に残ることは間違いないでしょう!
今回ご紹介させていただいたプレゼンテーションの極意は以下の通りです。
- 共感作用
- オーバー表現
- ギャップ方
- リピート方
- 言葉の強弱
- 内集団バイアス
- 数字の「3」マジック
- 同調圧力
- 代弁効果
- 感情表現
何事にも学びを見出だす姿勢を大切にしたいです!
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました!
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