気に入った音楽を繰り返して聴いてしまう経験はあるでしょうか。そういう経験がなければ、音楽ではなく、読書や旅行ではどうでしょう。一度読んだ本をもう一度読むこと、あるいは一度訪れたところをもう一度訪れることなど、気に入ったことを繰り返すのは、なぜか。それが快いことを知っているからではありますが、それを繰り返しやすいのはわけがあります。ザイアンス効果(単純接触効果)と呼ばれる影響のためです。
ザイアンス効果(単純接触効果)とは?
ザイアンス効果とは、アメリカの社会心理学者のロバート・ザイアンス(1968)が提唱した人の心理的傾向性について分析したものです。「ある刺激に繰り返しさらされることで、刺激に対する態度の変化が生じる」というのがザイアンス効果。
関心の薄いもの、苦手なもの、そういうものを何度も見たり聞いたりするうちに、段々に関心は濃くなり苦手意識は消えてゆき、好意的感情が起こることもザイアンス効果です。
ある商品ブランドの認知度を上げて売上につなぐこともザイアンス効果が影響していると言えます。一定の値を限度に、接触回数に比例して好意的感情が起こるため、恋愛に応用している策士もいるようです。
音楽を繰り返して聴いてしまうのはザイアンス効果?
音楽それ自体がもたらす快さに加えて、ザイアンス効果によって好意的感情(快の感情)も起こるため、いったん気に入った音楽を聴いてしまえば何度も繰り返して聴きたくなります。
また、人は任意の音の配列(似ている曲)を繰り返して聴くと、一度聴いた音よりも音楽的であると評価する傾向性をもっているようです。モーツァルトの音楽を気に入っている人でしたら、モーツァルト特有の律動を気に入ってしまい、モーツァルトの楽曲すべてに好意的感情を起こしやすくなります。
Amazon Musicの「おすすめ機能」は、こうした人の心理的傾向性を踏まえて用意されています。
ザイアンス効果のしくみ
あるものを何度も見たり聞いたりするうちに、段々に好意的感情が起こるのはどうしてか。それは詰めればこういうことであります。私たちは「安心(快)」を求めます。いったん知ったものは、そのものの安全性や危険性が明らかにされます。
しかし、まだ知らないもの、すなわち未知のものは、その安全性と危険性とが明らかではないため不安な感情が起こってしまう。不安な感情とは「不快」にほかなりません。だから未知のものに接触するよりは、既知のものに接触したいという安心を求める感情が起こるのです。
別言すれば、未知を克服しなければ、同様のものだけを求めるようになるため、白痴が続き、高齢者がそうなるように幼稚化が進行します。
だから次に音楽を聴くときはポップスとかロックとかジャズとか未知の演奏を、次に旅行するときは未知の土地へ、次に読書するときは苦手意識のある本に触れてみてはいかがでしょうか。
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