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森鴎外『魚玄機』の要約と解説

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魚玄機ぎょげんき』は森鴎外の短編小説であり、唐代末期に生きる女詩人魚玄機(844〜871年)の生涯を描いている。

玄機は倡家に生まれるが、その家風には染まらずに、倡道ではなく詩人の道を歩む。容貌は美しく、詩才は卓抜しており、二十六歳の頃には玄機の名は高大に馳せることになる。

詩人という世間離れした道を歩む玄機だが、道をどこかで踏み違え、人を殺めてしまい、刑に処せられて、生涯を終えることになる。

 

外部リンク:森鴎外『魚玄機』青空文庫

 

『魚玄機』の要約

 

倡家に生まれた魚玄機は、その家風に染まらずに、幼き頃より詩を学び、その才を練り上げてゆく。

ある宴会にて、魚家の妙等たえたちは、高名な詩人である温飛卿おんひけいと親しくなり、魚家で詩を作る玄機について彼に話す。

それに好奇心を起した温は魚家を訪れて、玄機と対面し、詩を見え、その才を称する。温を起点として玄機の詩名は次第に高くなるが、玄機の美貌が禍いし、閨房を狙う男共により玄機の詩才は乱されてゆく。

女道士(道教を信奉し、道教の教義にしたがって活動する職業)になり、咸宜観かんぎかん(道教の寺院)に籠居して詩を作る玄機は、楽人である陳と会うことで、世俗的な情を募らせてゆく。

しかし陳は咸宜観のはしため(下女)である緑翹りょくぎょうと仲睦まじいようで、その仲を訝しんだ玄機は、緑翹に詰問するうちに殺めてしまうことになる。

玄機は刑に処せられ、二十六年の生涯を終えた。

 

『魚玄機』の解説

 

美人の愁いは詩を実らせるが、芽生は詩を陳腐なものにする。女詩人・魚玄機の人殺しは、その芽生の朽ち果てた詩であり、悲劇である。

温飛卿に会い玄機の詩名は次第に高くなる。この頃の玄機はまだ愁えており、男心に通じている。

玄機の詩才の頂は、玄機が咸宜観に入道する頃に達し、その転落は悟入した頃の女子(女心)の芽生である。久しく玄機の詩を見なかった温は、玄機から送られた詩を読んで訝しげに首を傾けている。

玄機の心を起したのは楽人の陳との邂逅である。これまで脱俗的であった玄機は、ようよう世俗的な情を募らせて、しまいには嫉妬の念を発し、陳と親密な関係にある婢・緑翹を殺めてしまう。

『魚玄機』は典型的な悲劇作品であるが、本作の登場人物である魚玄機も温飛卿も緑翹も実在しており、その生涯は悲劇的である。いみじくも鴎外の文章力によって、魚玄機という詩人の一生は紛れもない詩に飾られたのである。

 

令和二年 十一月

 

 

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