この世界を考えると、まるで悪魔が世界を創造したかと思いたくなる。
「人口の原理」や「人殺しを正当化できる理性」「快楽に伴う苦痛」など、できるだけ世界は悪くつくられている。
この世界を生きる上で私たちは「苦痛」を避けて通ることができない。
私たちの中には「苦痛」を避けて「快楽」を求める快楽主義者がいる。
人間の持つ「食欲」や「性欲」などの欲望を積極的に満たす人生を送る人たち、またそうした欲望を最優先事項に設定する人たちのことである。
しかしよく考えると「食欲」や「性欲」などを満たす「快楽」は結局のところ「苦痛」にたどり着く。
たとえば「食欲」による快楽は、糖尿病や動脈硬化さらには肥満など私たちの体に歪みが起こる。
また「性欲」による快楽は、エネルギーを大幅に使ってしまい、翌日には疲労がたまる。その先には「人口の原理」による食糧難、果ては「人殺し」という「苦痛の世界」が待ち受けている。
このように「快楽」には「苦痛」がつきまとうのである。
しかしながら、ここに「苦痛」のない「快楽」が存在する。
それが「美」である。
「美」は人間の心を魅了して、美欲という欲望を満たしてくれる。
そして「美」による「快楽」の先に待ち受ける「苦痛」は無い。
自然の景観をいつまでも眺めていたいと思うこと、小鳥のさえずりを耳にして心を安らげること、そして遊び心という美。
「苦痛」を避けて通れない世界の中で、ただ「美」が、「美」だけが、人間の欲望を満たして苦痛を避けて通ることができる唯一の快楽の方法である。
医療技術・科学の進歩によって私たちの寿命は今後ますます長くなるだろう。
いや、長くなるを通り越して、「死」を克服し、永遠なる生命が誕生するかもしれない。
こうした世界の中では今後ますますと「美」の必要性は高くなるだろう。
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